保護者登録で困っている
別居親のための道標
別居後、保育園や幼稚園から連絡が来なくなった。自分の名前が保護者情報にない。「あなたは保護者ではありません」と言われた。そんなとき、何から始めればよいのでしょうか。
「子どもの親なのに、保育園では第三者のように扱われてしまう」
「園から行事や健康状態について何も知らされない」
「行政に確認すると、“同居している親だけを登録しています”と言われた」
別居後の保育園・幼稚園の対応について、このような相談を受けることがあります。
しかし、「別居している」というだけで、すべての場面で当然に親・保護者としての情報から外れるという単純な話ではありません。
一方で、「親なのだから必ず全ての情報提供を受けられる」とも限りません。
親権、監護の状況、実際の養育への関わり、DV・虐待等の安全上の事情、裁判所による定めなどによって、必要な対応は変わります。
そこでこの記事では、「保護者登録で困った別居親が、まず何をすればよいのか」を、一つずつ整理します。
最初に伝えたいこと
まず、保育園や行政窓口で「保護者として登録されていません」と言われても、その場で諦める必要はありません。
反対に、その場で職員と激しく争う必要もありません。
行政が持っている情報と、実際の事実が違っているのであれば、訂正を求める余地があります。
行政がそもそも情報を持っていないのであれば、まずは自分から事実関係を申告し、記録を求めることが出発点になります。
法律上の「保護者」は、単純に「同居親」ではありません
子ども・子育て支援法第6条第2項では、「保護者」を、
つまり法律上、「現在子どもと同じ住所に住んでいる人だけ」という定義にはなっていません。
一方で、ここには「現に監護する者」という要件もあります。
したがって、別居親であるというだけで当然に全員がこの法律上の「保護者」に当たると断定することもできません。
実際にどのように子どもの養育へ関わっているのか、親権・監護にどのような定めがあるのかなど、個別具体的な事情が重要になります。
「私はこの子の親であり、現在の親権・監護・養育の状況はこのようになっています。行政として必要な情報を正確に記録してください」
と伝える方が、行政との話は前に進みやすくなります。
行政は、家庭の事情を自動的には知りません
改正民法に関する法務省の「Q&A形式の解説資料(民法編)」では、学校や教育委員会等について、親権や監護権に関する事情を当然には知り得る立場にないことが指摘されています。
そのため、親権者が学校等に対し、親権や監護に関する事実関係を申告することが望ましいとされています。
これは非常に重要です。
口頭だけでは、担当職員が替わったときに話が引き継がれないこともあります。
だから私は、重要な内容については、できるだけ文書で申し出ることをおすすめします。
大東市では、保育所等の入所申込に父母双方の自署
大東市でも、保育所等の手続について父母双方を行政が把握するための改善が行われています。
大東市の保育所等入所申込では、「教育・保育給付認定申請書兼入所申込書」と「誓約書兼同意書」について、保護者(父)と保護者(母)それぞれの自署を求めています。
私はこれまで、子どもの入園・退園のような重要な手続が、一方の親だけの意思で進んでしまう問題を議会で繰り返し取り上げてきました。
現在、大東市の公式ホームページにも、父母それぞれの自署が必要であることが明記されています。
ここは重要です。
これは、「別居している父母なら、必ず双方が保護者登録される」という意味ではありません。
しかし、子どもに関する重要な行政手続において、父母双方の存在を確認する仕組みを行政がつくることは可能だという実例です。
誰を親として把握するのか。
誰の意思を確認するのか。
誰の連絡先を行政が持つのか。
書類の設計は、行政の考え方そのものでもあります。
保護者登録で困ったら。この6つの順番で確認する
まず提出する「保護者情報・連絡先登録等申出書」の例
いきなり訂正請求から始めるより、まず通常の行政上の申出として自分の情報を伝える方法があります。
以下はそのたたき台です。
令和○年○月○日
○○市長 様
○○市○○部○○課 御中
住所 ○○県○○市○○
氏名 ○○ ○○
電話 ○○○-○○○○-○○○○
1.申出の趣旨
私の子である○○○○(生年月日:令和○年○月○日)が利用している○○保育園について、市及び施設が管理する児童・保護者情報に、私の氏名、子との続柄及び連絡先等を記録していただくよう申し出ます。
現在、父母は別居しておりますが、私は現在も子どもの養育に関わっており、○○○○〔親子交流、養育費の負担、通院・教育への関与など、実際の状況を記載してください〕という状況です。
2.現在の親権・監護等の状況
現在の親権・監護に関する状況は、以下のとおりです。
・婚姻状況:○○
・親権者:○○
・監護者に関する定め:○○
・裁判所の調停・審判等:○○
・親子交流の状況:○○
3.申出の理由
子ども・子育て支援法第6条第2項は、「保護者」を「親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者」と定義しています。
また、改正民法に関する法務省の「Q&A形式の解説資料(民法編)」では、学校や教育委員会等は親権や監護権に関する事情を当然には把握できないことから、親権者から関係機関に対して事実関係を申告することが望ましい旨が示されています。
子どもの安全確保、緊急時の連絡、養育に関する正確な情報管理の観点からも、私と子どもとの関係及び連絡先について、市及び施設において適切に記録していただきたいと考えています。
4.求める対応
私の氏名、子との続柄、電話番号、メールアドレスその他必要な情報を、市及び施設が管理する児童・保護者情報に登録又は記録してください。
現在のシステム又は様式上、保護者欄への追加登録ができない場合には、備考欄、自由記載欄、別紙その他の方法により、私が子の父・母であること及び連絡先を記録していただくようお願いします。
登録又は記録ができないと判断される場合には、その理由と、根拠となる法令、条例、規則、要綱又は運用基準等について御教示ください。
5.安全上の配慮について
DV、虐待、保護命令その他、子ども又は関係者の安全確保のために特別な配慮が必要な事情がある場合には、安全確保を最優先として適切に取り扱っていただくことを求めます。
以上
何を添付すればよいのか
例えば、戸籍全部事項証明書、本人確認書類、調停調書、審判書、親権・監護に関する合意書などが考えられます。
ただし、関係のない個人情報まで大量に行政へ提出する必要はありません。
先に担当課へ、「この事実を確認してもらうには、どの資料が必要ですか」と確認してから提出する方がよいでしょう。
開示請求・訂正請求は、こう使い分ける
「訂正請求をすれば、保護者登録してもらえる」と思われることがあります。
しかし、訂正請求は万能な制度ではありません。
個人情報保護委員会も、訂正請求について、保有個人情報の「内容が事実でない」場合の制度であり、評価や判断の内容は対象外になると整理しています。
電話番号が違う。
続柄が違う。
親権者に関する客観的記録が事実と違う。
「自分にも情報提供すべきだ」
といった行政上の評価・判断そのもの。
だから、先に「開示」を確認する
個人情報保護法上の行政機関等への訂正請求は、原則として「開示を受けた保有個人情報」が対象です。
行政が何を記録しているのか分からないのに、いきなり訂正を求めても、対象を特定できません。
自治体によって開示請求書や手数料、窓口等が異なるため、まず個人情報担当部署に確認してください。
「保護者として登録できません」と言われたら
ここで大切なのは、「なぜですか」と具体化することです。
理由によって、次にすることが変わります。
DV・虐待など、安全上の事情がある場合
DV、虐待、ストーカー、保護命令、接近禁止、その他具体的な危険がある場合には、住所・電話番号その他の情報を安易に共有してはいけません。
この記事は、「別居親には必ず全ての情報を渡すべきだ」という趣旨ではありません。
安全上の具体的な事情を確認すること。
そして、
単に「別居している」という理由と、具体的な安全上の理由を混同しないこと。
です。
目指したいのは「別居親優先」ではありません
私は、同居親より別居親を優先すべきだと考えているわけではありません。
反対に、同居しているという一つの事情だけで一方の親の情報を当然に排除することにも疑問があります。
これは、大東市で学校行事参加フローチャートをつくる過程でも、私が大切にしてきた考え方です。
学校の一人の先生に判断を背負わせない。
家庭の一方の主張だけで決めない。
安全上の事情を確認する。
子どものことを考える。
そして行政として、根拠をもって判断する。
保育園・幼稚園の保護者登録についても、同じだと思っています。
参考にしてほしい一次資料
法律上の「保護者」の定義を確認できます。
学校等が親権・監護関係をどのように把握するかについての考え方。
父・母それぞれの自署が必要であることを案内しています。
評価・判断は、原則として訂正請求の対象外であることを確認できます。
「保護者ではありません」と言われたら、そこで終わりではありません。
まず、行政が何を記録しているのか確認する。
自分の親権・監護・養育の状況を整理する。
必要な情報を文書で申告する。
客観的な事実が違うのであれば、開示・訂正の制度を確認する。
そして拒否されたのであれば、「なぜなのか」「何が根拠なのか」を確認する。
感情的に父母のどちらが正しいかを決めるのではなく、子どものために必要な情報を行政が正確に持ち、必要なときに適切に判断できる仕組みをつくる。
そのための最初の一歩は、一枚の申出書かもしれません。
大東市でも、一枚の申請書の運用を変えるところから改善が始まりました。
小さな行政実務でも、子どもと親の未来を変えることがあります。
















